本能寺ホテル

このブログの1st impressionタグでは基本的にネタバレ記事は書かないようにしていますが、ネット等で低い評価が流れている事実があり、この作品でネタバレするのは特に問題にならないと判断し、以下、ネタバレ記事が書かれます。spoilされたくない方は注意。

— Caution: You might be spoiled by The Following Article. —

「プリンセス・トヨトミ」の鈴木雅之監督によるオリジナルシナリオによる作品。2018年2月3日に録画していたが、見るに堪えず何度も玉砕しながらこのたびようやく最後までみました。

金もかかっているし映像表現にも相当力を入れているが、それでもテレビ制作の映画臭がまとわりつく仕上がり。常々テレビ制作の映画は絵作りを捨象するからああいう感じになると自分に言い聞かせてきたが、この映画を観ると絵作りに力を入れていてもテレビ映画はテレビ映画にしか仕上がらないという教訓を得た思い。

それほど絵作りには金と労力をつぎ込んでいるのが一目瞭然なのだが、イヤに強調されている綾瀬はるかのオッパイ以外に引きつける魅力のほとんどない映画であった。

なんだろう、Yahoo映画等では脚本の酷さが言われているが、むしろこの映画を制作する、意図というか目的意識の薄さが気にかかる。

確かに、本能寺の変はいろいろと納得いかない状況が少なくなくある。光秀はなぜ信長を討たねばならなかったのか。秀吉は何故かくも速やかに毛利征伐から戻ってこれたのか。不意打ちだとしても天下統一間近の信長が何故かくも簡単に討ち取られたのか。そしてなぜ信長の天下統一間近で謀反が起きなければならなかったのか--

これらのifをもとにお話を展開するのはかまわない。コニー・ウィリス張りの歴史SFだと主張したいなら、かなり抵抗はあるが止めはしない。(SFとは認めないけど…)

それはいいが、その発想を受けた後付けの論理展開が、「信長は現代の京都恋愛パック旅行のチラシを目にし、自らが目指した争いのない社会が未来に実現している事を確信、その歴史を変えない事を自らの死を持って選ぶ」というストーリーは、いくらなんでもレベルが低すぎないか。

そこそこ評価した「プリンセス・トヨトミ」の監督作品だから、この「本能寺ホテル」の良いところをなんとか探し出そうとして、私としてはこの作品レベルに合わせて姿勢を低くして観るはめになった。大変申し訳ないが、とてもしんどい映画の見方であった。

しかし、そもそも論だが、「現代の京都恋愛パック旅行のチラシ」ごときに天下統一間際の信長が心打たれるような状況で、本能寺の変にまつわる数々の謎が説得的に語れると何故思うのか?タイムスリップものの展開だと、同じフジ系列制作の「バブルへGO!」の方が、同じテレビ局映画としてもまだましだ。というか同じ発想に立つフジテレビ制作部のテレビ映画的着想が鼻について拭うこと能わずといったところだ。

万城目学氏の作品は軽妙で、その長さにもかかわらず一気に読んでしまう引力がある。フジの制作局の差し金ではなく、万が一、万城目氏の力作「プリンセス・トヨトミ」に影響されて、自分にも同じようなストーリーが書けるんではないかと錯覚したのであれば、私も良くやる錯覚だが、気持ちは大変よくわかる。しかしあなたにも私にも書けるような話ではないのだ、プリンセス・トヨトミは。今作でキチンと懲りて、次は作家ぶらずにキチンと書かれた原作の映像化を目指した方が良いのではなかろうか。もしフジの差し金なら、テレビ局に極力口を出させない立ち回り方を研究した方が良い。

「プリンセス・トヨトミ」が悪くはなかったので、鈴木監督には次回作に期待したいところである。

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