LOOPER/ルーパー

作家性はある。『スターウォーズⅧ ラスト・ジェダイ』で物議を醸したライアン・ジョンソンの監督作品。それにしてもディズニーはメジャーで三本しか撮っていなかったジョンソンによくSWⅧを任せたものだ。そのSWⅧの前作に当たるのがこのLOOPER/ルーパーだ。

いきなりの麦畑、瞬間的に現れる物体、いや人、頭巾を被らされ後ろ手に縛られた人、その瞬間に散弾銃風の弾丸が浴びせられる――展開は早く、説明はない。以後序盤はとつとつとこの世界の日常が映像で語られ、ある出来事が起き、やはり映像で語られる。映像の文法をよくわかっている監督のようだ。無駄なく軽やかな口調、いや映像調でスムースにストーリーは進んでいく。

話が核心に迫り始めた頃からボロが出始める。
田舎暮らしやリアルな家族関係が感じられない展開になる。
なにかが緩い。誰かに似てる。
そうだスワロウテイルの岩井俊二だ。
若い。

確かにSFファンに共通のツボを押さえており、話は合いそうな奴のようだ。だけど、そこは12モンキー、そこはAKIRA、映像じゃないけどそれはフィリップ・K・ディックの『時間飛行士からのささやかな贈り物』、バック・トゥ・ザ・フューチャーetc.etc.

SF映画賞を含めれば12もの脚本賞ノミネート/受賞という割にはオリジナリティに欠けるSFネタのオンパレード。ありきたりな設定によくあるシークエンスの順列組み合わせをちょっと変えて見せてるだけという印象が強い。結末が意外という部分でさほどSF好きでもない一般観衆や評論家の目を引いただけのような気がする。

もちろん悪くはない。が、この作品を見てSWⅧの監督に抜擢、というのはディズニーは本当に思いきったものだ。先日の騒動の一つの原因がわかったように感じる。
★★★☆

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