オールリバー・ストーリー ~ミラーを拭く男~

和製ストレート・ストーリー。主人公が皆川さんなのでオールリバー・ストーリーかな。出足不調だがなんとなく引き込まれていき最後まで見てしまった。着眼点がいい。

カーブミラー拭きの全国行脚なんてとってつけた動機だったらヤだなぁと思ったがまあ納得。事故そのものではなく、事故をきっかけにカーブミラーの神聖さ?に気がつき、率直にとった皆川さんの行動が触媒となって人のいろんな行動を誘発する。ストーリーはそれだけ。ほとんどぶれてない。

北海道の雄大な大地をバックにただミラーを拭く男。東北の山村のくさ原を風が駆け抜け、海のように波打つ中を駆け抜ける自転車など、意外と豊かな日本的景観の中でシュールな画を描きながら進む展開はこれまでの邦画にはなかったタイプのアートなロードムービーを創りあげていく。こまごまとしたドラマがカーブミラーを拭く皆川さんの生き様という主題に絡んでこざかしく展開するが、ロードを続ける皆川さんにはノイズでしかない。退職金すら捨て皆川さんはミラーを磨き続ける。悠然と流れる時間の中で、ただ、ミラーを磨く。そういう映画である。

正直、描き切れていない部分も多々あるもののこうした監督の意図は充分読める。もう少し丁寧な絵作りと、どうでもいい部分である各ドラマの「どうでもいい」ことの演出ができていたら、言葉ではいいようのない香りのする映画になったような気がして残念だ。カーブミラー磨きが、日常のあれこれより、どのようにどうでもよくないか、という哲学がもう少しだけ必要なのかもしれない。

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